植松敬
静岡県熱海市の土石流で被害をうけた老舗の製麺所が、クラウドファンディング(CF)で再建に向けた資金を募っている。自家製麺を地元のラーメン店や学校などに届けてきた。資金とともに、「おいしい麺をまた届けて」などのメッセージも寄せられている。
休業に追い込まれた両親みて…立ち上がった姉妹
製麺所は、土石流が発生した同市伊豆山で80年以上続く「コマツ屋製麺所」。3代目の中島秀人さん(52)が妻と義母の3人で切り盛りしてきた。ラーメン店など市内約40店のほか、学校給食や病院、ホテルに自家製麺を卸してきた。
だが、7月の土石流で製麺所の製麺機や大型冷蔵庫のあるフロアに土砂が流れ込んだ。
休業状態に追い込まれ、翌日から取引先への連絡に追われる両親を見て、次女の茉子(まこ)さん(24)が東京に住む姉の真唯(まゆ)さん(26)と相談し、CFで資金を募ることを思い立った。
製麺所の再開に必要なのは、大型冷蔵庫、冷水機、給湯器、配達用のバイク……。300万円を目標にスタートすると、公開から約17時間で達成した。必要な備品などを精査し直し、目標を800万円に修正した。
不明者の捜索が続く中、資金を募ることにためらいもあったため、CFサイトでは「伊豆山地域に暮らしていた人たちにとって一筋の復興の光になれたら」と説明した。
支援を申し出てくれた人は800人以上、総額は800万円を超えた。寄せられた資金のほか、姉妹2人を喜ばせたのが支援者からのメッセージだ。
「伊豆山の皆さんがまた日常に戻れることを願っています」「熱海の子どもたちの給食に、またおいしい麺が届きますように!」
茉子さんは「先の見えない日々にみんな不安を抱えている。こんな状況だからこそ、前を向いて復興の輪を広げていきたい」。
CFの受け付けは20日まで。専用サイト、CAMPFIREでコマツ屋製麺所を検索。(植松敬)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル